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ホームインスペクターとは
ホームインスペクターとは、住宅診断士のことをいいます。
資格取得後に日本ホームインスペクターズ協会へ登録をすると、JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)になり、プロとしてホームインスペクションの業務に携わることができます。
ホームインスペクションが常識化するのは時間の問題
昨今の空き家問題の深刻化に伴い、中古物件の流通の更なる活性化に一役を担う可能性のある資格です。
宅建士や建築士の資格を取得されている人が多く受験しており、資格を取得することでリフォームの提案にも役立つなど、仕事の幅が広がります。
実際にインスペクションを行うことで取引時のトラブル防止などに役立ち、買主はもちろん売主に対してもメリットがあります。
今後、インスペクションが不動産取引において当たり前になっていくのは時間の問題です。売却価格(購入しても良い価格)にも建物の状態は少なくても影響してきます。
不動産版「かかりつけ医」という立場で第三者として診断をします。健康診断でいう「問診」のような位置づけです。
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ホームインスペクションは「一次診断」
ホームインスペクションは、各種建築関連法規に適合しているかどうかなどは調査項目にされていない、「一次診断」のみ行います。
調査方法は、目視です。
例えば「雨漏り」が発生した場合、目視で分かる場合もあれば、家を一部取り壊して初めて原因が分かる場合もあり、このような場合は二次診断であり、建築士など専門職が原因究明にあたります。
建物の一部を壊す診断は、二次診断になるのでホームインスペクションの業務の範囲外になります。
当然、二次診断は費用が高額になりがちですが、「一次診断」は、より安価で調査できる、費用面でのメリットもあります。
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ホームインスペクター試験の難易度
年度によってばらつきはありますが、合格率はおよそ30%台です。
建築士や宅建士などの試験などと比較すれば、高い合格率といえるでしょう。
ただ、試験では、住宅を主としたホームインスペクション実務はもちろん、建築関連法規や建物の構造についても出題されます。
そのため、建築士の有資格者は合格しやすいと言えますが、宅建士の有資格者や一般の方だと、簡単に受かるとは言い切れません。
試験科目や出題範囲
出題範囲は次の通り(詳細は都度確認)
試験範囲
◆出題傾向◆
【建築分野概ね15問】
・住宅を主とした建築関連の法規に関する知識建築基準法、建築士法、住宅の品質確保の促進法・住宅瑕疵担保履行法他関連法規に関する知識
(2022年4月1日現在で施行されている法律に準拠 後記注意事項あり)
・住宅を主とした建築技術に関する基礎知識(二級建築士試験・木造建築士試験程度)
【診断分野概ね25問】
・住宅を主としたホームインスペクション実務(劣化の判断・調査、診断方法・報告書の
作成)に関する知識
【不動産分野概ね5問】
・住宅を主とした不動産売買(取引の形態や契約に関すること)に関する知識
2022年4月1日現在で施行されている法律に準拠(後記注意事項あり)
【倫理分野概ね5問】
・ホームインスペクションを行うにあたり必要な倫理観
・ホームインスペクションを行うにあたり必要と思われるビジネススキル(コンプライア
ンス、モラル、マナー)
2023年度第21回 JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)資格試験要領
本試験は、CBT方式となります。
- 試験頻度 年度内に4回実施
- 試験期間 6月、9月、12月、3月 ※試験日は1〜14日
- 申込期間 4月1日〜、7月1日〜、10月1日〜、1月年始〜
- 試験方法 4肢択一のマークシート方式、試験時間は90分
- 合格発表 JSHI協会HPにて、合格者と解答番号を発表
住宅の屋根、外壁、小屋裏、床下などの住宅全体の劣化状況や欠陥の有無を目視で判断し、メンテナンスすべき箇所や修繕時期、概算費用など、必要な知識や倫理観を有しているかを問われます。
年度別の合格率
多くの年度で合格率は30%台と高いように思えますが、前述したように、働いている業界・業種などにより、難易度の感じ方が変わります。
実施回 | 合格率 | 合格点 |
第21回 | 39% | 35/50点 |
第20回 | 39% | 35/50点 |
第19回 | 30% | 31/50点 |
第18回 | 42% | 31/50点 |
第17回 | 32% | 31/50点 |
第16回 | 24% | 30/50点 |
第15回 | 30% | 33/50点 |
第14回 | 31% | 32/50点 |
第13回 | 31% | 32/50点 |
第12回 | 34% | 38/50点 |
第11回 | 27.3% | 36/50点 |
第10回 | 31.9% | 35/50点 |
第9回 | 31.5% | 37/50点 |
第8回 | 30.5% | 37/50点 |
第7回 | 31.2% | 39/50点 |
第6回 | 28.2% | 38/50点 |
第5回 | 25.7% | 37/50点 |
第4回 | 25.6% | 36/50点 |
第3回 | 25.7% | 34/50点 |
第2回 | 25.2% | 35/50点 |
第1回 | 18.9% | 39/50点 |
日本ホームインスペクターズ協会HPより参照
第11回 JSHI公認ホームインスペクター 受験者傾向
分野別に合格基準点あり
一般的な試験と違うところが、分野別に合格基準点が設定されているところです。
単純に合格点以上の点数を取ればいい訳ではなく、それぞれの分野「建築」「調査診断」「不動産取引流通」「倫理」で合格基準点に達しなければ、合格できません。
- | 合格基準点 | 配点 | 正答率 |
建築 | 8点 | 15点 | 56% |
調査診断 | 18点 | 25点 | 70% |
不動産取引流通 | 3点 | 5点 | 66% |
倫理 | 3点 | 5点 | 75% |
第21回 分野別合格基準点(日本ホームインスペクターズ協会HPより引用)
どの分野においても、一定の知識がないと「中立的な立場」での判断やアドバイスができないということですね。
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ホームインスペクターの効果的な勉強法
筆者は、2019年の試験に合格しました。
実体験含め学習方法などをお伝えします。
公式テキストと過去問題集が中心
他の資格勉強と同様に、公式テキストと過去問題集を中心にした学習が効果的です。
2023年度試験対策用 過去問題集購入先はこちら
【第20回試験不合格者対象】開催JSHI公認ホームインスペクター(住宅診断士)資格試験合格対策動画講座
リンク
公認ホームインスペクター資格試験テキスト(令和新版)記載事項訂正のお知らせ20220628
WEB講座
なお、独学だけでは少し不安という人には、LEC東京リーガルマインドのWEBによる通信講座も受講できます。
重要なポイントを10時間(1授業1時間)で効率よく勉強できます。
LECのホームインスペクター通信講座はこちら
✔︎講義内容
内 容 |
ホームインスペクター(住宅診断士)を取り巻く社会情勢 |
インスペクションに必要な「建築知識の基本」 |
インスペクションの実践 |
不動産取引の基礎知識 |
公式テキストを活用した講義なので、試験対策も安心。
建築分野
当然ですが、「公式テキスト」と「過去問題集」の活用は必須です。
合わせて、「2級建築士 資格取得向けの書籍」を参考にしましょう。
ホームインスペクターの試験内容は、2級建築士の学科試験の内容と重なる部分もあります。
リンク
また、建築業界の人はこの分野が得点源になる可能性は高いですが、不動産業界(特に営業マン)の人にはイメージが湧きにくく、覚えるのに苦戦する可能性はあります。
不動産業界でも、賃貸管理や建物管理を仕事にしている人だと、馴染みのある分野かもしれません。
参考までに問題例を載せておきます。
問題例
建築設備に関する記述のうち、最も不適切なものはどれか。※過去問題集より引用
- コンセントに溜まったほころが水または湿気を含むことにより、プラグの2極間に微弱電流が流れる現象をトラッキング現象といい、住宅火災の原因の1つである
- 単相3線式の電気が引き込まれている場合は、100Vの機器および200Vの機器が利用できる
- 都市ガス(13A,12A)は空気より重いので、ガス漏れ警報器は床面近くに設置する
- 機械換気設備の検査では、点検口から換気扇やダクトなどの脱落の有無、換気設備の作動確認、異常音の発生の有無の確認がある
調査診断分野
「公式テキスト」と「過去問題集」の活用に加え、動画での学習をお勧めします。
特に馴染みのない人だと、テキストの文字を追っかけているだけでは中々入ってこないと思います。
覚える時は、「視覚から」ということを意識すると、頭に入りやすくなります。
過去試験から、調査診断と建築は大きな配点を占めています。
ホームインスペクターのメイン分野とも言えますから、「調査診断」は重要な分野と言えます。
参考までに問題例を載せておきます。
問題例
木造住宅のバルコニー手摺についての調査報告のうち、最も不適切なものはどれか。※過去問題集より引用
- 手摺にぐらつきがあった。危険であるため補修を勧めた
- 手摺の笠木の継ぎ手部分に隙間があった。雨漏りしないように補修を勧めた
- 手摺壁は外壁通気工法となっていないことが判明した。雨漏りしないように外壁通気工法をッ勧めた
- 手摺壁材の目地に隙間があった。雨漏りしないように埋めることを勧めた
不動産分野
出題箇所には大きな傾向あり、手付・瑕疵担保責任・媒介契約などが多く出題されます。
法改正が起きた年など改正部分が出題することもあるので、注意しましょう。
配点こそ低い分野ですが、1問も落とさないぐらいの意気込みで勉強しましょう。
宅建士の試験とも近いので、宅建士の勉強をしていると比較的簡単に感じます。
参考までに問題例を載せておきます。
問題例
不動産売買時の重要事項の説明に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。※過去問題集より引用
- 重要事項の説明は、建築士法24条の7により義務付けされた
- 売買契約が成立するまでの間に、不動産会社の仲介する担当者は、買主に対して物件に係わる重要事項の説明をしなければならない
- 対象建物が建築確認に係る検査済証を取得していないため、売買契約書に再建築時には同規模の建物を建てられないことを買主は了承する旨を記載し、重要事項の書面には再建築可であることを記載した
- 重要事項の説明では、マンションなどの区分所有建物の場合、専有部分・共用部分の権利関係や管理規約などについても書面で記載し、買主に説明しなければならない
倫理分野
ホームインスペクター倫理行動規定はHPに記載があるので、「公式テキスト」や「過去問題集」と合わせて確認しておきましょう。
ポイントとしては、ホームインスペクターの大原則である、「中立的な立場」や「第三者の立場」を念頭に問題文を読むことです。
問題文を読んでいると、特定の関係者(売主・買主・不動産会社など)に対して融通をきかすような、中立的な立場を超えた行為=「違和感」を感じる部分が出てきますので、その「違和感」を感じたら間違っている可能性があります。
一般的な社会人としての常識があれば、全問正解できる場合の多い分野です。
参考までに問題例を載せておきます。
問題例
ホームインスペクターの行動に関する次の記述のうち、最も適切なものはどれか。※過去問題集より引用
- ホームインスペクションの結果、継続している雨漏りが見つかったことから、購入を検討している依頼者に購入を見送ることを勧めた
- 仲介する不動産会社より、ホームインスペクションの依頼を受けたので、不動産会社にその対価として適正な費用を請求した
- ホームインスペクター自身が過去に設計を行った建物をホームインスペクションすることになったが、依頼者には特に報告せず、現地調査から報告書まで中立性の堅持に務めた
- ホームインスペクションの費用は、不具合箇所の数とリスクの大きさとし、建物の状況次第であると事前に説明した
合格者の声
日本ホームインスペクターズ協会HPでは、合格者の声を見ることができます。
先人のやり方を参考にしてみましょう。
『過去問題集』を5回ほど解きました。建築(木造・RC)、設備、調査点検、宅建業法関係、マンション関係、倫理規定などに細分した各回答時の正誤一覧表を独自に作成。自分の弱点を把握し、補強しました。疑問点は、所有の資料やネットで必ず調べました。
先ずは、ホームインスペクションの基本となる、国土交通省が2013年6月に公布した「既存住宅インスペクション・ガイドライン」を確認しました(注記.2017年2月3日には「既存住宅状況調査方法基準の解説」が国土交通省より公布されています)。次に、JSHI の参考図書である『JSHI 公認ホームインスペクター【住宅診断士】資格試験テキスト』をアマゾンで購入して、『テキスト』を最初から最後まで目を通してから、重要と思った部分に印をつけたり、書き込みをしました。
繰り返し学習することが大事です。私は1カ月半の学習で取得できるよう、時間を調整しました。1週間で『テキスト』と『過去問題集』を回せるように配分し、1ヵ月半で7回繰り返しました。そのほか、独自にレジュメを作成しました(後述)。
引用:試験合格者の声ー日本ホームインスペクターズ協会
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不動産営業マンは取引のプロであり、建物のプロではない
不動産会社は建物に関してのプロだと思っている人がいますが、実際は違います。
実は建物に詳しい訳ではない
業界の人であれば、周知の事実ですが、一般の人からは、不動産営業マンが不動産全般(建物含む)に詳しい人だと思われています。
しかし、実際は、不動産取引のプロであり、建物に詳しいわけではありません。
背景としては、不動産業界と建築業界は、スピード感含め仕事の進め方が異なり、業界間の情報交換などもあまりなく、実態としては連携があまりできていないところがあります。
不動産営業マンからすると、インスペクション(建物状況調査)をすることで、「売却や購入がスムーズに進みにくくなる」という認識があることが、浸透しきれていない要因の一つでもあります。
不動産取引の流れとインスペクション
一般的な不動産取引における、インスペクションを実施する流れを纏めました。
売る・買うどちらにしても契約前に行うのが理想であり、取引がスムーズにいきやすいタイミングです。
インスペクションは、買付申込書の提出前や物件引渡し後でも実施することはできますが、買主に不利になるケースが増えるというデメリットがあります。
注意として、宅地建物取引業法上(不動産取引上)のインスペクション(建物状況調査)は、既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士に限ります。
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購入側としてのインスペクションを依頼するベストなタイミング
売主と買主のどちらからもメリットがある適切なタイミングがあります。
購入申込書を提出してから契約締結前までの間
万が一、インスペクション(建物状況調査)をして不具合が見つかった場合に、不具合箇所の修理をする以外でも落としどころが増えるタイミングになります。
修理:原状回復のこと(元の状態に戻す)
主なメリット
- 売主と買主が共に契約に前向きで纏まりやすい(心理的な面)
- 修補の費用分を売買価格から下げて契約することも可能(金額面での調整)
- 売主と買主が建物の状況を理解した上で契約に進むことができる(トラブル防止)
✔主なインスペクションの実施するタイミング
- 購入申込書提出前(内覧しただけ)
- 購入申込後~契約前
- 契約後~引渡し前
- 引渡し後~3ヶ月
- 引渡し後3ヶ月超
インスペクションの本場はアメリカ
ホームインスペクション発祥の地はアメリカです。
アメリカを中心に欧米では、稼げる職業として位置づけされています。
2013年の国土交通省による「インスペクションガイドライン」の制定や2018年の売買契約前の重要事項説明時における「インスペクション説明義務化」は、アメリカやカナダ、イギリスなどを参考にしました。
日本においては、まだまだ道半ばなので、取引関係者含め重要性を伝えていく必要があります。
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まとめ
今回はホームインスペクター資格取得への勉強について紹介しました。
このポイントを抑えておくだけで勉強が効率的かつ理解した上で合格に近づくことができるようになります。まずはテキストの購入からスタートしてみることをおすすめします。
テキストを買って読むだけでも、勉強になることばかりで効果はあると実感しています。
前述したように、空き家問題がますます顕在化してきます。
ホームインスペクターの資格を持つ、あるいわ勉強した経験があれば、色々な意味で家や家族を守ることに繋がるかもしれません。
ホームインスペクターは資格を取り、登録さえすれば活動できます。もちろん実務経験を積んでからにはなりますが、実家などをうまく活用して身近なところから調査経験をしていきましょう。
以上、ホームインスペクター資格取得への勉強についてでした。
この記事を参考に実践してみてください。
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